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2009年10月29日 (木)

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部落問題を語ろうとするとき、わたしにはいくつかの障壁がある。端的にいえば“立ち位置”の問題である。政治性あるいは党派性といってもよい。解放運動は、全国水平社を源流とする複数の運動団体によって牽引されてきた。それぞれ異なったイデオロギーを掲げ、激しい論争が繰り広げられてきた。興味本位で論争の“行司役”になることはできない。しかし「部落問題」を避けるという行為それ自体、差別をめぐる状況の一部を構成してしまう。部落問題にとどまらず差別の問題にコミットすることは、考えれば考えるほどむつかしい。

Spivak, Gayatri C. (1988=2008) Can the Subaltern Speak?, In Marxism and the Interpretation of Culture., Eds. Nelson C. and Grossberg L., University of Illinois Press, pp. 271-313.(上村忠男訳『サバルタンは語ることができるか』みすず書房).

ある社会問題を考えようとするとき、当該の問題の細部に分け入り、固有・特有の事情や背景を知る必要がある。じぶん自身が見聞きできること限られていて、大勢の人によって書かれた過去の膨大な言説に頼ることが多い。それら「事実」とされるものを知ることが第一歩だが、同時に 【送料無料】 175/55R15 15インチ PIAA エレガンツァ S-01 5.5J 5.50-15 DUNLOP ダンロップ ルマン V(ファイブ) サマータイヤ ホイール4本セット【DUsum19】、その問題と他の問題との相違点を調べることも必要である。比べることによって、当該の問題の特徴がより鮮明になる。

さらに進めると、その問題を問題視している人=語りうるる人=が、その問題をどのように代表し、表象しているかということを知る必要がある。人物や発言が、その問題を代表( represent )しているか、

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、そして、どのように表象( represent )しているか。その合わせ鏡として、その問題と対峙せんとしている「わたし」という主体( subjectivity )の問題も同時に見つめる努力が求められる。

十数年前、駆け出し記者だったころのことを思い出す。米ソの核軍縮が少し前進したという国際ニュースが世界を駆けめぐったとき、そのニュースについて被爆者のコメントを取ってこいと命じられたことがある。被爆者は何十万人もいる。いったいだれのコメントを取ればいいのか。わずか数人のコメントに「ヒバクシャ」を代表させ、「ヒロシマ」の表象として報じてよいのか。

デスクがわたしにさせようとしていたのは、主な運動団体のスポークスマンにコメントを聞いてくることだったが、スポークスマンたちの言葉は容易に予想できたし、「ああ、またか」という思いがあった。社会運動をささえてきた人たちの言葉に意味がないわけではないが、予定調和を避けてみたいと考えたわたしは、社会運動とコミットしていない被爆者から直接コメントをもらうべく原爆養護ホームに向かった。何人ものお年寄りに核軍縮のニュースを平明な言葉で説明した。そして「いまのお気持ちは?」と訊ねた。だが、ほとんどの人が口を閉ざした。ただひとり、口を開いてくれた女性の言葉が「よう分からんです(よく分かりません)」であった。わたしはスピヴァクのいう「語ることができない」サバルタンの言葉に耳を傾けようとしていたのである。

わたしの企て失敗に終わる。わたしはごく短い原稿しか書けなかった。わたしが接触した被爆者たちは、核軍縮についてコメントを求められるなど予想していなかったし、語るべき言葉をもたなかったように思えた。ライバル紙には ★色番号塗装発送50 プリウス リアアンダー / ディフューザー【レクソン】プリウス 50 BLUE FORCE VERSION REAR UNDER WING カーボン製、主な運動団体の関係者を中心とした「被爆地としては喜ばしいニュース」「被爆者の願いが一歩前進した」といった大見出しの記事が掲載された。そして予想通り、わたしはデスクから困ったヤツだと思われたことだろう。

デスクが私に命じた「被爆者のコメントをとってこい」という言葉には、核軍縮が前進すれば被爆者は喜ぶという予想が含意されていて、そうした言説をマスメディアで再生産することが、核軍縮に正当性を与えるということが期待されていたように思う。それは被爆者の心理を手前勝手に想像(捏造)して、ニュースの「客観性」をまとったポリティクスでしかない。

ライバル紙の予定調和の記事はもちろん、それに協力した団体のスポークスマンの言説も、あきらかにサバルタンのもつ語りの力を最大限引き出し政治利用していた。そうした報道の繰り返しに反発を覚えはじめていたわたしも、結局のところ手前勝手な理屈にしたがってサバルタン性を都合よく利用しようと試み、彼ら彼女らに負担を与えるだけの、はなはだ迷惑な存在であったのである。

被爆者をめぐる問題と被差別部落の問題を比べるとき、ひとつの共通点がみられる。いずれも旧総評・社会党系の組織と、共産党系の組織があり、それらが対立関係にあって党派的・政治的だということだ。「「弱者」探しが止まらない?」で大澤真幸さんのエッセイ「左翼はなぜ勝てないのか 自己陶酔に映る弱者への 「同情」」について考えをめぐらせたことがあったが、そういう(やや意地悪な)まとめ方もできるだろう。サバルタンを食い物にする後ろめたさは、よき社会を作るという自己陶酔や、サバルタンを操る権力衝動のなかで雲散霧消するということかもしれない。

差別問題の中心課題は一義的に差別する者の問題だが、差別問題の初心者としての「強者」「加害者」は、複数の立場の「弱者」「者」の論理がぶつかり合う政治闘争を目の当たりにすると、一義的な問題よりも政治の問題に気を取られてしまい、冷めていく気がする。ときに、運動団体は腐敗することがある。そうしたことも、差別問題初心者の気持ちを萎えさせる。

「弱者」「者」を代表する社会運動の担い手は「弱者」や「者」であり、多くの解放運動は「行動する知識人」となった元サバルタンを主人公にして発展してきた。しかしサバルタンではなくなってしまった行動する知識人は、過度に政治的になったり、官僚化したり、堕落したり、独善的になったりすることがある。そうした「一部」の問題を指弾する意味はもちろんあるが、それを自己目的化させることは「全体」を見失うことにつながりかねない。

サバルタンにあらずとも、語ることは容易ではない。語れないわたしも、またサバルタンなのだろうか。

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